認知症の人にやってはいけないこと|避けたい言動と正しい接し方

2026.03.27

この記事でわかること

認知症の人に接するとき、知らず知らずのうちに「やってはいけないこと」をしてしまうことがあります。頭ごなしに叱ったり、子ども扱いをしたりすると、相手を傷つけたり不安にさせたりする原因になりかねません。

このような言動は、症状の悪化や心の負担を大きくしてしまうこともあるため、注意が必要です。本記事では、まず避けるべき言動とその理由を分かりやすく解説します。
さらに、安心感を与える3つの接し方の心得、暴言・暴力などの行動(BPSD)への対応方法、そして悪化を防ぐ生活の工夫や早期対策についても紹介。家族として、本人を支えながら穏やかに過ごすためのヒントを一緒に見ていきましょう。
なお、本記事でお伝えする「避けたい言動」は、認知症の方の人権と尊厳を守るという考え方に基づくものです。SOMPOグループは、介護保険法などの関連法令に則りつつ、「本人の尊厳の保持」を何より大切にしたケアを重視しています。
ここで挙げる内容は、そうしたケアの原則として推奨される接し方であり、個別のケースにおける法的評価や対応方針については、医師や介護の専門職と相談しながら判断することが重要です。

やってはいけない言動は症状悪化を招くので理解しよう

認知症の人は、記憶や判断力が低下することで不安を感じやすくなります。そんなとき、周囲の言葉や態度が強すぎると、心を閉ざしたり混乱したりしかねません。「何度も同じことを聞く」「思い出せない」などの行動には、必ず理由があります。
大切なのは、行動そのものを責めるのではなく、なぜそうなったのかを理解しようとする姿勢です。ここでは、やってはいけない言動とその影響を具体的に見ていきましょう。

頭ごなしに叱ると理由が分からず不安にさせる

何度も同じ質問をされたり、同じミスを繰り返したりすると、つい叱りたくなることがあります。しかし、認知症の人は「なぜ怒られたのか」を理解できないことが多いのです。
突然叱られると、本人は混乱し、「自分は悪いことをしたのだろうか」と強い不安を感じ、その結果、萎縮して言葉数が減ったり、記憶の混乱が進んだりすることもあります。
叱るよりも、「大丈夫だよ」「一緒にやろうね」と安心させる言葉を選ぶことが大切です。叱責ではなく共感の姿勢が、信頼関係を築く第一歩になります。

大声や命令口調は恐怖心を与える

声を荒げたり、命令口調で話したりすると、相手に強いプレッシャーを与えてしまいます。認知症の人は、指示を理解するまでに時間がかかるため、急かされることで混乱や恐怖を感じることが特徴です。
「早くして!」「何度言ったら分かるの!」という言葉は、本人にとって心の負担となり、拒否的な態度や暴言につながりかねません。優しい口調で、穏やかに話しかけることが大切です。
声のトーンを下げ、ゆっくりと伝えるだけで、安心感を与えられます。焦らず、相手のペースを尊重することで信頼につなげましょう。

細かい指摘や子ども扱いは自尊心を傷つける

「また間違えたね」「そんなこともできないの?」といった細かい指摘は、相手の自尊心を深く傷つけます。認知症になっても、本人の中には「自分らしさ」や「大人としての誇り」がしっかり残っていることを忘れてはいけません。
子ども扱いをされると、悔しさや悲しみを感じ、関わりを拒むようになることもあります。それが孤立や症状悪化につながることも少なくありません。
できたことを認め、「ありがとう」「助かったよ」と感謝の言葉を伝えることで、相手の心は落ち着きます。自尊心を守る対応こそが、穏やかな関係を築く鍵です。

行動制限や閉じ込めは自立を奪う

危険を避けたいあまりに、本人の行動を強く制限してしまうことがありますが、「動かないで」「出ちゃだめ」といった言葉は、本人の自由と自立心を奪ってしまいます。また、可能な限り身体拘束を避けることが、介護の基本原則です。
閉じ込められたように感じると、ストレスや不安が高まり、逆に徘徊や暴言などの問題行動が増える可能性もあります。安全を守るためには、環境を整える工夫が必要です。
たとえば、転倒防止マットや見守りセンサーを使うことで、本人の自由を尊重しながら安心を保てます。行動を止めるのではなく、支える工夫を意識しましょう。

3つの心得で安心感を与える接し方を実践する


認知症の人と穏やかに関わるためには、「驚かせない」「急かさない」「自尊心を傷つけない」という3つの心得が大切です。これらは、相手の気持ちを落ち着かせ、安心感を与える基本的な姿勢となります。
どんなに症状が進んでも、相手には感情やプライドがあります。優しく寄り添う態度が、信頼と安定した関係を生み出すことを忘れないようにしましょう。ここでは、その3つのポイントを具体的に見ていきます。

驚かせない:正面から声をかけゆっくり近づく

突然背後から声をかけると、相手は強い驚きを感じ、混乱することがあります。認知症の人は周囲の状況を把握しにくくなっているため、不意な接近や大きな声に敏感です。
まずは、正面から目線を合わせてゆっくり話しかけることが大切です。名前を呼んでから、落ち着いた声で短く伝えると理解しやすくなります。
たとえば、「〇〇さん、おはようございます。ごはんにしましょうね」と穏やかに話すだけで、安心感が生まれます。相手を驚かせない工夫が、信頼関係を築く第一歩です。

急かさない:相手のペースに合わせる

認知症の人は、言葉を理解したり行動したりするのに時間がかかることがあります。そのため、「早くして」「どうしてまだなの?」と急かすと、焦りや混乱を招きかねません。
焦りは不安を強め、ミスを増やす原因にもなります。一度つまずくと、自信をなくしてしまうことも少なくありません。大切なのは、相手のペースに合わせることです。できるまで待つ、見守る、手を添えるなど、優しく支える姿勢を心がけましょう。

自尊心を傷つけない:敬意を持って接する

認知症になっても、本人の中には「自分」という意識があります。だからこそ、丁寧な言葉づかいや思いやりのある態度が欠かせません。
つい「かわいそう」と思って子ども扱いをしたり、無意識に命令口調になったりすると、プライドを傷つけてしまいます。相手を一人の大人として尊重することが大切です。
敬意を込めた「さん」づけや、感謝の言葉を伝えるだけでも印象は大きく変わります。「ありがとう」「助かります」と伝えることで、相手の心は穏やかになり、関係もより温かくなります。

BPSDを理解し、暴言・暴力などの行動に適切に対応する


認知症の人に見られる「暴言」や「暴力」などの行動は、本人の性格が変わったわけではありません。これらは「BPSD(行動・心理症状)」と呼ばれ、不安や混乱、環境の変化が原因で起こることが多いのです。
対応を間違えると、症状が悪化したり、家族が疲れきってしまうこともあります。ここでは、暴言や暴力が出たときの具体的な対応法と、落ち着かせる工夫について説明します。
なお、緊急事態や手に負えないほどの暴力・混乱が起きた場合、地域包括支援センターや専門医療機関、または緊急時の公的相談窓口に迅速に連絡し、安全確保を最優先にしましょう。

暴言が出たときの対応と声かけ例

暴言を受けるとショックを受けたり、言い返したくなったりすることがありますが、真正面から反論すると、相手の怒りや混乱を強めてしまいかねません
まずは「怖かったね」「どうしたのかな」と、感情を受け止める言葉を使いましょう。相手が怒るのには必ず理由があり、暑い、寒い、痛い、疲れた、そんな小さな不快感がきっかけになることもあります。
落ち着いた声で「今は大丈夫だよ」「一緒に休もう」と伝えることで、安心感が生まれます。暴言を「攻撃」ととらえず、「助けを求めるサイン」と理解することが大切です。

安全を確保しつつ落ち着かせる工夫

暴力的な行動が見られるときは、まず安全の確保を最優先に考えましょう。無理に止めたり近づいたりせず、少し距離を取って落ち着くのを待ちます。
周囲に危険な物がある場合は、静かに片づけます。そして、照明を少し落としたり、音を減らしたりして、環境を穏やかに整えるのも効果的です。
相手の感情が落ち着いたら、やさしい口調で「大丈夫ですよ」「ここにいますから安心してください」と声をかけましょう。安全と安心の両方を守る対応が、信頼関係を長く保つポイントです。

認知症を悪化させるリスクを知り、早期に対策する


認知症は、進行を完全に止めることは難しいですが、悪化を遅らせることはできます。そのためには、リスク要因を理解し、早めに対策をとることが大切です。
性格やストレス、生活習慣病、睡眠の質など、日常の中にヒントは多くあります。また、顔つきや表情の変化などの初期サインを見逃さないことも重要です。ここでは、悪化を防ぐために知っておきたいポイントを紹介します。

性格やストレス傾向がリスクに影響する

几帳面すぎる性格や、強い責任感を持つ人は、ストレスをためやすい傾向があります。長期間のストレスは脳の働きを弱め、認知機能の低下を早めることがあるのです。
また、「頑張らなければ」「迷惑をかけてはいけない」と自分を追い込みやすい人も要注意です。精神的な負担が続くと、うつ状態や睡眠障害を引き起こしやすくなります。
リラックスできる時間をつくり、心の緊張をやわらげることが大切です。笑顔や会話、趣味の時間が、脳の健康を守る助けになります。

生活習慣病や睡眠不足も発症に関わる

糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、脳への血流を悪化させ、その結果、認知症の発症リスクが高まることがわかっています。
また、睡眠不足も注意が必要です。脳は眠っている間に老廃物を排出し、記憶を整理しています。十分な睡眠がとれないと、脳の疲労がたまり、判断力や集中力が低下してしまうため注意が必要です。
食事・運動・睡眠のバランスを整えることが、最大の予防策です。毎日の生活リズムを見直すだけでも、大きな効果があります。
参照元:厚生労働省 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にするMCIハンドブック」

顔つきや表情の変化など初期症状に気づく

認知症の初期は、「なんとなく違うな」と感じる小さな変化から始まります。顔の表情が乏しくなったり、目の輝きが減ったりすることもサインのひとつです。
また、いつも明るかった人が無口になったり、好きだった趣味に興味を示さなくなったりすることもあります。これらの変化を「年のせい」と片づけないことが大切です。
早めに受診し、原因を確認すれば、治療やリハビリで進行を遅らせることができます。家族が変化に気づくことが、最も大切な“第一歩”です。

性差や生活背景による違いを理解する

認知症のリスクや症状には、男女の違いも見られます。女性は長生きする分、アルツハイマー型認知症が多く、男性は脳血管性認知症が比較的多い傾向が大きいです。
また、仕事や家庭での役割、生活習慣によっても症状の出方は変わります。たとえば、長年一人暮らしをしていた人は孤独感から、介護を担ってきた人は疲労から認知機能が低下することがあります。
こうした背景を理解し、個々に合ったサポートを行うことが大切です。同じ認知症でも、対処法は人によって違うことを忘れないようにしましょう。

栄養バランスを整え脳を守る

食事は、脳の健康を守るうえで欠かせない要素です。青魚に含まれるDHA・EPA、ナッツやオリーブオイルの良質な脂質は、脳の働きを助けます。
また、ビタミンB群や葉酸、鉄分をバランスよく摂ることも重要です。これらは神経伝達をスムーズにし、記憶や集中力を保つのに役立ちます。甘い物や塩分の摂りすぎは控え、和食中心の食生活を意識しましょう。

「食べること」は心を元気にする時間でもあります。 楽しく食べる習慣が、脳の健康を支えます。

親が認知症になったら取るべき行動と手続き

親が認知症かもしれないと感じたとき、どうすればよいのか分からず戸惑う人も多いでしょう。まずは慌てず、相談できる場所を知ることが大切です。
医療機関だけでなく、地域の支援センターや介護サービスを活用すれば、家族の負担を軽くしながら安心して支えることが可能です。ここでは、具体的な行動のステップを紹介します。

地域包括支援センターなど相談窓口を活用する

認知症に関する相談は、まず地域包括支援センターが頼れる窓口です。専門のスタッフが、医療機関や介護サービスの紹介、手続きの流れを丁寧に案内してくれます。
また、市区町村の福祉課でも介護保険の申請や認定の相談が可能です。ひとりで悩まず、早い段階で相談するようにしましょう。「こんなことで相談していいのかな?」と思うことでも問題ありません。早期の相談が、本人にも家族にも大きな安心をもたらします。

介護サービスや施設利用で家族の負担を減らす

家族だけで介護を続けるのは、心身ともに大きな負担になります。そんなときは、デイサービスやショートステイなどの介護サービスを活用しましょう。専門の職員が見守る中で、本人が安心して過ごせる時間を持てます。

家族も一時的に休むことで、気持ちに余裕を取り戻せます。介護は「頑張りすぎないこと」も大切です。支援を受けることは甘えではなく、よりよい介護を続けるための選択だということを意識しましょう。

できることを活かしたケアで本人の自尊心を保つ

認知症になっても、できることは必ず残っています。着替え、洗濯物をたたむ、簡単な料理をするなど、本人ができることを任せることが大切です。
それが「自分はまだ役に立てる」という自信につながります。一方的に手助けしすぎると、自立心を奪ってしまうことにつながりかねません。
「ありがとう」「助かったよ」と声をかけ、成功体験を積み重ねていくことが、本人の尊厳を守るケアになります。

認知症を悪化させない暮らし方と予防の工夫

認知症の進行を遅らせるには、生活習慣を少しずつ整えることが効果的。特別なことをする必要はありません。日々の中に小さな工夫を積み重ねることが大切です。
脳を使う活動を取り入れ、家族と楽しく関わる時間を持つことで、心の安定にもつながります。

脳を刺激する生活習慣を取り入れる

読書、会話、計算、散歩などの活動は、脳を刺激し、神経細胞の働きを保ちます。特に人と関わる時間は、感情や記憶を活性化させるため、効果的です。
無理に新しいことを始める必要はありません。好きなことを続ける、楽しみながら行うことが一番のポイントです。音楽を聴く、昔の写真を一緒に見る、家事を分担する——そんな小さな習慣が脳を守ります。 日常の中の“笑顔の時間”こそが、最高の予防になります。

家族が無理なく続けられる支援方法

介護は長期戦です。家族が疲れてしまうと、よいケアを続けることが難しくなります。そのためには、「無理をしない仕組み」をつくることが大切です。
家族内で役割を分ける、週に一度は休む日を作る、地域のサポートを利用するなど、少しずつ負担を減らしましょう。
また、介護者自身が笑顔でいられることも重要です。周囲に頼り、気持ちを共有することが、家族全体の支えになります。「ひとりで頑張らない」ことが、最も大切なケアです。

認知症の人にやってはいけないことに関するよくある質問

家族が認知症になると、どのように接すればよいのか迷う場面が多くなるものです。ここでは、特に多く寄せられる3つの疑問に対して、できるだけわかりやすく解説していきます。
いずれも、本人の気持ちや尊厳を大切に守るために欠かせない視点であり、対応の際の基本として知っておきたいポイントとなります。

認知症の家族が物忘れを繰り返したとき、何度も指摘してよいですか?

何度も同じことを聞かれると、つい「さっき言ったよ」と言いたくなります。しかし、本人は本当に思い出せないのです。指摘を繰り返すと、不安や自信喪失につながりかねません
対応のコツは、「初めて聞いたように答える」こと。同じ質問でも、穏やかに答えることで安心感が生まれます。メモを貼る、カレンダーに予定を書くなどの工夫も効果的です。責めるより支える姿勢が、穏やかな関係を保ちます。

失敗や間違いをしたとき、叱るのは良くないのでしょうか?

はい、叱るのは逆効果です。叱られることで本人は混乱し、「何が悪かったのか分からない」と感じてしまいます。間違いを見つけたときは、まず落ち着いて受け止めましょう。
「大丈夫、一緒にやり直そう」と声をかければ、安心して行動できます。
叱るよりも、サポートする気持ちが大切です。小さな成功を褒めることで、自信と意欲を取り戻せます。

本人が危険だと思われる行動をしそうなとき、行動を止めたり制限しても良いですか?

可能な限り身体拘束を避けることが、介護の基本原則です。危険を感じたときに止めること自体は必要ですが、強く制限すると本人の自立を奪ってしまいます。「やめて!」ではなく、「一緒にやろう」「こっちの方が安全だよ」と提案する形が理想です。
行動を完全に止めるのではなく、危険を避ける環境づくりがポイントです。本人が納得できる工夫を取り入れることで、無理なく安全を守れます。

まとめ:正しい接し方と早期対策で本人も家族も安心

認知症の人にやってはいけないことは、叱る・命令する・子ども扱いするなど、相手の心を不安にさせる言動です。反対に、穏やかで尊重のある関わり方は、安心と信頼を生み出します。
早期にリスクを知り、家族や専門機関と協力して支えることで、本人も家族も穏やかに過ごせます。小さな気づきと優しい声かけが、認知症ケアの第一歩です。

まずはお気軽にご相談ください